伝統と革新のはざまで揺れる日本酒業界。
特に地方の酒蔵は、若者の酒離れや贈答文化の衰退など、かつてない変化の波に直面しています。
そんな中、“100万円の日本酒”は、本当に不可能なのか。
単なる高価格なプレミアム酒をつくるのではなく、
その一滴に「誰かの人生」「地域との関係性」「時間の積み重ね」を宿らせ付加価値を生み出せるかを思考しました。
今回のプログラムでは、
▶︎ 日本酒の価値を“味”や“価格”以外でどう伝えるか
▶︎ 新たな市場やライフスタイルに合わせた酒の提案とは何か
▶︎ 酒蔵と地域、そしてユーザーをどうつなぐ仕組みがつくれるか
という3つの問いを軸に、「100万円で売れる理由のある日本酒」を、ゼロから企画・設計し、実現可能性までをプレゼンすることを課題としました。
はじまりは、宮城県大崎市の老舗蔵・寒梅酒造の見学から。
伝統を守りながら革新を続ける同蔵の歴史や姿勢を学ぶ中で、出された問いは――
「寒梅酒造だけでなく地域全体に波及するような企画を考えてほしい」
高価格なだけの酒ではなく、“地域(大崎市)にとって意味がある酒”とは何か?蔵元の想いと地域の魅力を起点に、挑戦が始まりました。
若者の酒離れ、都市との価値観のギャップ、日本酒の贈答文化の衰退。「売れない理由」は数多くありました。
それでも、日本酒が「人と人をつなぐ贈りもの」である本質に立ち返り、それぞれのチームが異なるターゲットに向けた“ストーリー性のある酒”を構想し始めました。
結婚、成人式、自由研究――人生の節目や家族の記憶に寄り添う体験型のギフト酒という方向性が見えてきました。
チームごとに徹底的に議論を重ね、荒削りながらも、それぞれの仮説が見え始めてきました。
「日本酒って、大人になる象徴かもしれない」
「夫婦にとって、年月を重ねること自体が価値なんじゃないか?」
「子どもにとっての“はじめての日本酒”って、飲むことじゃなくて“知ること”かもしれない」
キーワードは、“通過儀礼”と“記憶”、そして“家族”。
商品としての酒ではなく、「人生の節目に寄り添う酒」という軸が見えはじめ、ターゲットや体験設計、届け方などの輪郭が少しずつ立ち上がっていきました。
プロジェクトの中盤では、販売価格100万円の根拠を問い直し、
「モノ」ではなく「体験」や「ストーリー」へと価値をスライド。
体験工程・参加人数・納品物・アフター体験まで含めて企画を再構築し、ブランド名やビジュアルイメージも整えていきました。
実在するユーザーを想定し、購入したくなるパッケージへと磨き上げます。
成果発表会に向けて、コンセプトワーク・スライド作成・発表リハーサルを重ね、“想いが届くプレゼン”の構成を練り上げました。
単に売れるかどうかではなく、地域や人にとっての意味が問われる発表の場に向け、一人ひとりが自身の言葉で語れるよう準備を整えていきました。
最後の最後まで企画の磨き上げが行われ、プレゼンの前日まで企画書の書き直しが行われました。
大崎市役所で行われた最終プレゼン。
大崎市長を審査員長に迎えチームごとに100万円の価値を持つ日本酒企画を発表しました。
・成人式×乾杯文化:「乾杯男・乾杯女」任命と酒造体験を組み合わせた次世代継承企画
・結婚×記念日:13年後に熟成酒が届く、夫婦の時間を祝うギフト酒
・親子×学び:体験と自由研究を組み合わせた、親子で育む日本酒プログラム
それぞれが“人生の節目”に寄り添う酒の新しいかたちを提案し、
審査員から高く評価されました。企画は現在も実現に向けて動き続けています。
ふたりの春を、日本酒に託して。
結婚や記念日に向けた、13年熟成のオーダーメイド日本酒プラン。
田植え体験から始まり、1年/3年/8年/10年/13年後の5回にわたって記念日ごとに特別なボトルが届く。
それぞれのボトルには、未来のふたりに向けたメッセージや動画も添えられる。
富裕層・ウェディング層向け“ラグジュアリー体験×日本酒ギフト”【記念日連動・長期型】
家族で体験、未来に残す自由研究。
限定10組、田植えから酒造りまでを家族で体験できる1泊2日のツアー。
完成した日本酒「むすびの雫」は、家族の記憶と一緒に自宅に届く特別な1本。
鳴子漆器体験や温泉宿泊も含まれ、大崎の魅力をまるごと味わうことができる。
都市部ファミリー層向け“教育×旅行×地域体験”【自由研究・体験型ツーリズム】
“若者の酒離れ”や“伝統産業の縮小”が叫ばれる中で、
寒梅酒造とローカルイノベーションスクールが共に挑んだのは、
「100万円で売れる日本酒」をゼロから企画するという無謀とも思える問いでした。
与えられたのは、高級酒という枠にとらわれない、自由な発想と地域資源。
そして立ち上がったのは、「記念日」「成人式」「親子の自由研究」など、
人生の節目に寄り添う体験型の日本酒たち。
価格以上の“意味”を届けることができるか?
日本酒というプロダクトを通じて、どれだけ深く人と地域に関われるか?
半年間の試行錯誤と学びを経て、3つの異なる価値提案が形になりました。
このプロジェクトは、「モノを売る」のではなく、
“物語を贈る”という、新たな日本酒の可能性を示す一歩となりました。
そしていま、酒蔵も、地域も、若者も、次の一歩へと進み始めています。